チェロの音程に「正解」は一つではない?
~ピタゴラス音律・純正律・平均律のお話~
こんにちわ、つかなむです。
チェロを始めると、多くの人が悩むのが「音程」です。
チューナーを見ると合っているのに、「何だか響きが悪い」と言われたり、先生から「もう少し低く」「もう少し高く」と指摘されたりします。
「チューナーでは合っているのに、なぜ?」
実は、その理由の一つが音律にあります。
音律とは?
音律とは、簡単に言えば音と音の間隔の決め方です。
私たちは「ド・レ・ミ・ファ・ソ…」という音階を当たり前のように使っていますが、実は「ミはドより何Hz高いか」という決め方にはいくつもの考え方があります。
代表的なのが、
- ピタゴラス音律
- 純正律
- 平均律
の3つです。
① ピタゴラス音律 ~メロディーが美しい~
最も古い音律の一つで、「完全5度」という音程を基準に作られています。
この音律では、
- ド→ソ
- レ→ラ
などの5度の響きがとても美しくなります。
そのため、単旋律を歌う音楽や古い音楽では、とても心地よく聞こえます。
一方で、ド・ミ・ソのような和音は少し硬く聞こえることがあります。
② 純正律 ~和音が美しい~
こちらは、和音を一番きれいに響かせることを目的にした音律です。
例えば「ド・ミ・ソ」の和音では、それぞれの音の比率がとてもシンプルになり、まるで一つの音のように溶け合います。
弦楽四重奏や合唱を聴いていて、「鳥肌が立つほど響きが美しい」と感じる瞬間がありますが、その多くは演奏者が無意識に純正律へ近づけているからです。
ただし、この音律には欠点があります。
調が変わる(転調する)と、音程が合わなくなってしまうのです。
③ 平均律 ~現代の標準~
現在のピアノは、ほぼすべて平均律で調律されています。
オクターブを12等分し、どの半音も同じ幅になるように作られています。
そのため、
- ハ長調
- ト長調
- 変ホ長調
どんな調でも違和感なく演奏できます。
クラシックだけでなく、ポップスやジャズなど、現在私たちが普段聴いている音楽のほとんどは、この平均律を前提に作られています。
チェロはどの音律で弾くの?
ここがチェロの面白いところです。
チェロにはフレットがありません。
つまり、指をほんの少し動かすだけで、音程を自由に変えることができます。
そのため、チェロ奏者は場面によって音程を自然に使い分けています。
例えば、
ピアノと一緒に弾くとき
ピアノは平均律なので、それに合わせます。
弦楽四重奏のとき
和音が美しく響くように、純正律に近づけます。
メロディーを歌うとき
旋律が自然に流れるように、少し音程を調整することもあります。
つまり、チェロには「いつでもチューナー通り」が正解というわけではないのです。
大人になってチェロを始めた方へ
大人から始めると、どうしてもチューナーを見ながら「合っている・間違っている」と考えてしまいます。
もちろん、最初はそれで十分です。
まずは平均律でしっかり音を取れるようになることが大切です。
でも、少し慣れてきたら、「響き」を意識してみてください。
「チューナーでは少しずれているのに、先生は『その方がきれい』と言う。」
そんな経験をすることがあると思います。
それは間違いではなく、より美しく響く音程を探しているからなのです。
最後に
チェロは、自分で音程を作る楽器です。
だからこそ難しくもあり、奥深くもあります。
音程は「正解を当てるゲーム」ではありません。
一緒に演奏する人や、その場で鳴っている和音を聴きながら、一番美しく響く場所を探していく作業です。
これこそが、フレットのない弦楽器ならではの魅力なのだと思います。
最初はチューナーを先生に、そして少しずつ自分の耳を先生に。
そんな気持ちで練習を続けると、チェロはますます楽しい楽器になっていくでしょう。
それでは、また(^^)

コメント